能力が低いのに自信満々な馬鹿「ダニングクルーガー効果」

TIPS

成功体験を重ね、自信を持つことはとても大事ですが、成長を重ねていくには謙虚さも必要です。少しの経験を積んだだけで、自分は優秀だと感じてしまう現象は「ダニングクルーガー効果」と呼ばれ、認知心理学や社会心理学の界隈では、認知バイアスと呼ばれる心理現象のひとつとして知られています。

「ダニングクルーガー効果」は、心理学者のダニングとクルーガーが「なぜ能力の低い人間は、自分自身を素晴らしいと思い込むのか」という研究から生まれた理論です。

「ダニングクルーガー効果」とは

図では、縦が自信の度合い、横が知識や経験を表しています。各場面での心理状態を見ていきましょう。

馬鹿の山

少しの知識と経験を得て成功体験を数回重ねた結果、完全に理解したような気持ちになって「自分は優秀だ」と自信が満ち溢れてきます。

もしかすると、「あの人のことだな」と思い当たる人が何人かいるかもしれません。けれども、自分自身もそうかもしれませんのでご注意ください。「認知バイアス」は脳のクセであり、自覚症状がありません。脳が無意識のうちに判断してしまうのです。

絶望の谷

実践を進めていく中、知識と経験の不足に気づき、自信を失っていきます。例えば、新しいチャレンジに取り組んでいる時、「行けるかも!」と感じていた中で色々なアクシデントに遭遇し、知識や経験の乏しさ、業界の深さ・広さに気づいた状態です。自分の知識量が、80%、90%なのではなく、10%程度にも満たないと気づいた時です。

啓蒙の坂

自信を失い、いかに無知であるかに気づいた後、学びと経験を繰り返しながら、成長を実感して「こういうことか」と本質的な理解が重なってきている状態です。一度、絶望を経験し、深さや広さを知っているため、謙虚さを持ちながら自信が付き始めている状態でもあります。

継続の大地

さらに学びと経験を繰り返しながら、謙虚さと自信の両方を合わせ持っている状態です。自分の苦手なこと、得意なこと、知らないこと、知っていることを理解していて、適切な自己評価ができる状態です。これからどんなことを学ぶべきかも自分自身で判断できます。

「ダニングクルーガー効果」から学ぶこと

人は誰でも「馬鹿の山」を通り、自身を過大評価してしまう可能性があります。適切な程度の自信ではなく、過剰な自信を持ってしまうことがあるのです。どんなに気をつけていても、脳が勝手に過大評価してしまうのです。認知バイアスとはそういうものです。

だからこそ、「馬鹿の山」は厄介です。以下に当てはまる場合は、「馬鹿の山」にいる可能性があります。

上司や周囲のメンバーから評価されていないと感じる。

自分は優秀だと錯覚しているため、他人を適切な相対評価ができなくなっている状態の可能性があります。自分自身は大きな目標を達成していたと思っていても、その目標は、大きな目標を達成するために細分化された小さな目標だったり、レベルに合わせて設定された目標だったりします。

他人のミスが許せない。

人それぞれ得意・不得意があることを考慮せずに、自分の得意な分野のみで他人も評価し、「自分はしっかり出来ているのに、あの人はミスをして迷惑をかけている」と視野が狭くなっている状態です。自分の不得意な部分は棚に上げ、他人の苦手な部分のみにフォーカスしてしまっている場合があります。

問題を他人のせいにしてしまう。

「自分は優れているのに、解決できないのはあの人の能力が低いから」と、自身の能力を棚に上げて、上司や周囲のメンバーの能力を否定してしまうケースです。「あの人の対応が良くないから」といった形で、全ての原因を他人のせいにしてしまいます。

自分の不足している部分がわからない。

学びや経験にゴールはありません。大体の場合、自分が不足している部分がわからないのは、深さや広さを知らないからです。

自分は大丈夫だと思っている。

交通事故を起こしてしまう人や、詐欺に遭う人の多くが、「まさか自分が」と言います。自分の能力を知り、自分は注意しなければならないと考えている人は、そのようなコメントはしません。

「馬鹿の山」は誰しもが通る道

「馬鹿の山」はネーミングが強烈ですが、必ずしも悪い意味ばかりではありません。根拠が乏しい自信も時には大事です。ビジネスシーンでは、知識や経験が乏しくても、勢いをつけて立ち向かっていくべきタイミングもあります。

また、知識や経験がない中でも果敢に挑戦するからこそ、知識や経験の不足に気づくことができます。チャレンジしない人は、「馬鹿の山」にたどり着くことすらできません。

「馬鹿の山」は、誰しもが通る道であり、「馬鹿の山」を通るからこそ、「継続の大地」へ進むことができます。

「馬鹿の山」という言葉を聞いて「あの人のことかな?」と思い浮かぶなら、その人をぜひサポートしてあげましょう。