組織や個人による「変革への抵抗」の種類

TIPS

組織が発展していくためには、常に変革が必要になります。「リーダーシップ」とは変革を推進することを意味します。近年の「リーダーシップ」は、役職を持つ管理者が推進するとは限りません。多くの若手社員にも変革が期待されています。

企業における変革は、実行時に必ずといっていいほど「抵抗」が発生します。

発生した抵抗は、放置すると一部の従業員が周囲のメンバーを巻き込んでのレジスタンス化や、組織不和によるモチーベーションダウン、離脱者の発生等、チームに悪影響を生み出してしまいます。

ここでは、変革を実行した際に起こりうるメンバーの反応と抵抗の種類を理解し、対策のための準備を整えましょう。

変革の必要性と変革の種類

そもそも何故、変革は必要なのでしょうか。

市場の環境は常に変化していくため、同じやり方を続けることはできません。どのような業界であっても、競争があります。変革を諦めることは、現状維持ではなく、衰退を意味します。だからこそ、企業は常に変革に取り組み、実行していく必要があります。

この点をしっかり認識した上で、変革の種類の確認です。

小さな変革

既存の手順を変更する、ルールを加える、新しいサービスを導入する等、会社における小さな変革は多数あります。担当者レベルでの売上増加をやコスト削減、品質向上を狙ったもので、現場レベルで生まれることも多いのが、「小さな変革」です。現代のスピード感あふれる競争の中では、ボトムアップ型(部下から上司へ提案する形)での「小さな変革」はとても重要な取り組みになります。

大きな変革

新しい組織をつくる、既存の事業の路線を変更する、新しい事業を創出する等が大きな変革にあたります。組織にインパクトを与えるレベルでの売上増加やコスト削減を狙ったものです。企業規模問わず、時代の変化に合わせて、新しい一手を打ち出していくことが必要です。

当然ながら、小さな変革ほど従業員から受け入れられやすく、大きな変革ほど抵抗が生まれやすくなります。

変革への反応

リーダーやキーマンが変革を進めるとメンバーからは様々な反応が起きますが、大きくカテゴライズすると、以下の3タイプに分かれます。

早い段階で変革を受け入れる人

変化に対する抵抗感が最も少なく、協力的に変革に取り組もうとする人たちです。柔軟性が高く、好奇心旺盛で、変化を好む人たちです。変革を進めるリーダーにとってありがたい存在です。推進をより活性化させ、サポートしてくれる場合があります。

不安を感じつつ、様子見する人

ためらいを感じながらも、変革によって何がどう変わるのかを慎重に見極めようとする人たちです。変革を支持するかしないかは、どのようなメリット・デメリットがあるかが重要なポイントになります。リーダーにとっては、この反応を示すメンバーに対し、不安の払拭や困惑の解消を行いながら、理解を求めていく必要があります。

徹底的な拒否反応を示す人

変化を嫌い、組織の変革を支持しない人たちです。頑なに変革を拒否する人は、何故変革が必要なのかを理解していない場合がありますので、「市場の環境は常に変化していくため、同じやり方を続けることはできない。」ということを第一に理解してもらうよう努める必要があります。

拒否反応がなくならない場合、最終的には、本人の側から他部署への異動、転職、仕事からの逃避(退職等)などの撤退戦略の検討を開始することになります。リーダーの落ち度を見つけた場合は、その点を徹底追求してくる場合もあります。リーダーにとっては、徹底的な拒否反応を示す人たちに対し、どの程度のエネルギーを注力するか、適切な判断を取る必要があります。

なお、変革に抵抗を感じるのは、悪いことでも異常なことでもありません人は変化を嫌う生き物です。特に、自身にデメリットが大きいと感じている場合は正常な反応とも言えます。

変革への抵抗

続いて、どのような抵抗が発生するかを確認してみましょう。

個人からの抵抗

1.習慣 従来の慣れ親しんだ方法から抜け出せない
2.安全 自分の職務が危険にさらされることへの不安
3.経済的要因 収入が減るかもしれないことへの不安
4.未知に対する不安 上手くいくかわからないことへの不安
5.選択的情報処理 都合の悪い情報は無視し、耳触りが良いことだけを聞く

組織からの抵抗

1.構造的慣性 従来の慣れ親しんだ方法から抜け出せない
2.限られた焦点 組織の一部だけに限定した変革の場合、全体の方向性と合わない
3.グループの慣性 グループの規範がそれを拘束し、変革への賛同者が増えない
4.専門性への脅威 特定グループの持つ専門性が不要になる場合の抵抗
5.既存権力 決裁権の再配分による権力の減少への抵抗
6.資源配分 予算やスタッフの縮小に対する抵抗

マネジメント入門(2009)スティーブン P. ロビンス

以下は抵抗の例です。

・新しい企画を始動。→業務量が大きく増加する可能性がある(安全、未知に対する不安)。
・採用力強化のため、服装や勤務時間のルール緩和→内勤チームには恩恵があるが、営業チームには恩恵がない(限られた焦点)。
・会計ソフト導入により、経理のメンバーが導入に反対姿勢を示す。→人員が削減される可能性がある(専門性への脅威)。
・全社的なデジタルマーケティングの推進に営業部長が反対姿勢を示す。→社内での権威を失うことを危惧(既存権力、資源配分)。

変革への抵抗は、確実に発生する

変化が発生する時、抵抗は確実に発生します。メンバー全員の抵抗感を完全に払拭することは現実的に不可能です。けれども、抵抗が発生すること自体を受け入れ、どのような抵抗が起きるかを予想しながら推進することにより、抵抗を最小限に抑えることは可能です。

また、変革を推進される立場のメンバーにとっては、メンバー自身も変革をサポートし、推進していく立場になっていくことが近年のフォロワーシップで求められている役割です。抵抗する側になるか、従うメンバーになるか、変革をサポートするメンバーになるか、選択権はメンバーそれぞれにあります。